栄養に関する基礎知識①

栄養




食べ物は命のみなもと…栄養

 現在の私たちの食生活は、豊富な食材に恵まれ、多様な味わいの料理を楽しむことができます。食事は家族や親しい人たちとのコミュニケーションの場であり、新しい人との出会いの場にもなります。またお正月や節句など、行事や風土と結びついた文化的な側面もあります。食事にはさまざまな機能や楽しみがありますが、その原点は、生命の維持です。自然界のあらゆる生き物と同じように、人間も食べ物に依存して生きています。従って、食事の内容は身体の機能にさまざまな影響を与えます。食事と身体の関係を、原点にかえって考えてみましょう。

生物が外界から食物を得て、成長し、活力を保ち続ける身体の営みを栄養といい、栄養の源になる物質を栄養素といいます。さまざまな研究から、栄養素の働きと身体の機能や健康との関係が明らかになってきました。その結果、食事で大切なのは、すべての栄養素をバランスよく摂取することだといえます。また、病気などで身体の機能が低下したときには、さらに食事が大切になってきます。栄養素について知ることは、日々の献立を考える助けとなり、健康を保つことや、あるいは病気の治療、回復のために役立つでしょう。

エネルギーになるものは主に糖質(炭水化物)、脂質ですが、糖質の摂取量が足りないと、たんぱく質が分解されてエネルギー源となります。安静にしていても、臓器を動かすなど、生命を維持するためにはエネルギーが必要です。また活動量が多いほど、たくさんのエネルギーが使われます。逆に、活動量で使う分より多くの糖質や脂質をとると、その分は身体に蓄積されます。

からだをつくるものは、筋肉や髪や爪などをつくるたんぱく質、骨や歯をつくるミネラルのほか、細胞膜などをつくる脂質の3つです。中でもたんぱく質は身体のすべての部分をつくることに関係しています。

からだの調子を整えるものはビタミンとミネラルです。体温を調節したり、体内で必要な物質をつくったり、神経の働きに関わるなど、身体の状態を一定に保つために大事な栄養素です。ビタミンの一部を除いては体内でつくることができない物質なので、食事からとり入れなければなりません。

バランスのよい食事とは、これらの3つの要素を必要量に見合った分だけとり入れられる食事を意味しています。

糖質(炭水化物)

糖質はエネルギーになる栄養素の中で最も重要なものです。日本人の一般的な食事では、摂取エネルギーの60%前後を糖質で得ています。米、小麦など主食として食べられる穀類のほか、いも類、とうもろこしなどに含まれています。また、果物や砂糖に含まれる糖質もエネルギーとなります。糖質はエネルギーとして使われるほか、脂質の代謝にも関与しています。余った糖質は、グリコーゲンや中性脂肪に形を変えて体内に貯蔵されます。

脂質

脂質は少量でも高カロリーの効率のよいエネルギー源です。1gの糖質またはたんぱく質の持つエネルギーは4kcalですが、1gの脂質は9kcalのエネルギーを発生します。また、貯蔵脂肪としてエネルギーの貯蔵にも役立っています。このほか脂質には、細胞膜を構成する、身体の機能や生理作用を一定に保つ、食品の脂質部分に含まれる脂溶性ビタミン(A、D、E、K)の供給源となる、などの働きがあります。

血液中に含まれる脂質には脂肪酸、中性脂肪、コレステロール、リン脂質の4つがあります。次にそれぞれの特徴をあげます。

【脂肪酸】

脂肪酸は直接エネルギー源として使われます。また、血圧調節、血液凝固、免疫機能などのさまざまな調節機能に関わる生理活性物質の材料となったり、生体膜の構成成分となります。

脂肪酸は構造の違いにより飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分けられます。食品にはこれらが混合して含まれていますが、動物性脂肪には飽和脂肪酸が多く、植物油や魚類の油には不飽和脂肪酸が多く含まれています。不飽和脂肪酸のうち、リノール酸、リノレン酸は正常な発育や機能の維持に不可欠でありながら体内で合成できないため、食事から摂取しなくてはならず、必須脂肪酸と呼ばれています。

飽和脂肪酸には血中のコレステロールを増やす働きがあり、反対に不飽和脂肪酸にはコレステロールの胆汁への排出を促進して、血中のコレステロールを下げる働きがあります。しかし、不飽和脂肪酸にもとりすぎると動脈硬化やアレルギー反応などに悪影響を与えることもあることから、特定の脂肪酸に偏ることなくバランスよく摂取することが大切といえます。一般的に、脂質の摂取は飽和脂肪酸(動物性脂肪)1に対して不飽和脂肪酸(植物性油や魚類の油)2の割合が望ましいとされています。

【中性脂肪】

中性脂肪はエネルギー源である脂肪酸の貯蔵形態で、食事から摂取する脂質の大部分を占めます。余った脂質、糖質、タンパク質は中性脂肪となって脂肪組織や肝臓に貯蔵され、必要に応じて分解されてエネルギーとして使われます。

【コレステロール】

コレステロールはホルモンや胆汁酸の材料になるほか、脳や神経などの細胞膜の構成成分となります。体内のコレステロールのうち食べ物からとり入れられたものは約3割にすぎず、残りの7割は体内で糖質や脂肪酸を材料に主として肝臓、皮膚、腸粘膜などで合成されたものです。

【リン脂質】

リン脂質は細胞膜や脳の組織の構成成分となります。疎水性物質の親和性を保つ役目をしています。

たんぱく質

たんぱく質は多数のアミノ酸がつながったもので、生体のたんぱく質は約20種のアミノ酸からできています。そのうち、人間の身体に必要でありながら体内でつくることのできないものを必須アミノ酸といいます。

体中にとり入れられたたんぱく質はアミノ酸に分解されて、筋肉、皮膚、毛髪、爪、臓器、神経などの細胞組織の成分や、酵素、ホルモン、免疫物質、筋収縮や輸送に関与する物質など、それぞれの働きに必要なタンパク質に生合成されます。

また、糖質の摂取量が足りないときには、分解されてエネルギーとして消費されます。このため、糖質の不足はたんぱく質の本来の機能を奪うことになります。

ミネラル(無機質)

人間の身体は約60種類の元素で構成されています。このうち主要元素と呼ばれる水素(H)、炭素(C)、窒素(N)、酸素(O)が約95%を占めています。その他の元素を総称してミネラルといいます。特に栄養素として不可欠な16種類を必須ミネラルといい、骨や歯、筋肉や血液などの成分となるほか、さまざまな生理作用に関わっています。ミネラルは体内でつくることができないため、食べ物からとらなければなりません。

ミネラルの不足はさまざまな機能の障害を招き、骨粗鬆症や貧血、筋力の低下、味覚障害などの疾患を引き起こすことがありますが、反対に過剰になっても障害をもたらします。

ビタミン

ビタミンは、糖質、脂質、たんぱく質の代謝を助け、生命を維持するための生理作用に不可欠な栄養素です。ビタミンには脂溶性ビタミンと水溶性ビタミンの2種類があります。脂溶性ビタミンは脂質と一緒に体内に貯蔵することができますが、水溶性ビタミンは体内に貯蔵できる日数が脂溶性ビタミンにくらべ少ないため、不足しないようこまめに摂取することが必要です。またミネラルと同様、さまざまな生体反応に関わっているため、不足や過剰摂取により多くの機能障害を起こします。

食物繊維

食物繊維は、人の消化酵素で消化されない食物中の成分の総称です。食物繊維は主に穀類、野菜、果物、いも類、海藻、甲殻類などに含まれています。

食物繊維の多い食べ物は自然とかむ回数を増やし唾液の分泌をうながすほか、少量で満腹感が得られ、食べすぎの防止に役立ちます。同時に、小腸での糖質の消化吸収をゆるやかにするため、血糖の上昇が抑えられて糖尿病の予防につながります。また、コレステロールや胆汁酸を吸着するものもあり、血中コレステロール値も抑えることができます。大腸では腸内細菌による発酵を受けてエネルギー源(短鎖脂肪酸)を生成するほか、腸内の発がん性物質などの有害物を抑える有効な菌を増やします。また便容量が増えることや、腸内細菌が生成したガスの刺激を受けることで、排便がうながされて便秘が予防されます。

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